冬の話 1

10月も終わり、大学にも慣れて、よく遊ぶ友達も固まってきた。

僕は、語学の時間に知り合った清水ハルカさんと中村トオルの3人でよく遊んでいた。

 

3人とも1年生だが、僕と清水さんは同い年で、トオルは1つ年上。

僕は、いつもどことなく煮え切らない感じの、どちらかというと背の低い、イケメンではないが不細工でもないと信じている、理学部の学生だ。

トオルは背が高く、ぎりぎりイケメンの部類だが、一浪ということもあり、自信のなさからくるナルシストという感じがぬぐえない。彼も理学部。

一方清水さんはそこそこ可愛い。あっけらかんとしていて、少しだらしなさそうで、それでいてどこか儚げだ。学部は農学部だそうだ。

 

大学生にもなれば、幾つだろうと酒は飲む。

3人とも一人暮らしだから、よく3人で朝まで宅飲みをしたものだ。

毎週かわるがわる3人の家を順番に使って飲むのだ。

 

人の部屋っていうのは、どこか面白い。特に本棚はその人を表しているように思える。

僕の部屋には、電子ピアノにスピーカーとたくさんのお酒、本棚には楽譜に理工学の専門書、そして太宰の小説が少しだけ。こういうのが大学生っぽいと思っていた。

トオルの部屋は、浪人生のよう。テレビにゲーム機、そして本棚には大学受験の参考書などが並べてある。あとトランペットが投げられている。本当に大学生か、お前は。

清水さんの部屋は、少し不思議だ。が、典型的な文学少女といったところか。ぬいぐるみが10個くらいあるが、どれもゆるい。脱力系の可愛さだ。そしてものすごい数の小説が本棚には並べられている。シェイクスピアゲーテから、東野圭吾村上春樹、良く知らない作家のもある。

 

理系の元気で儚い文学少女は、理学部の童貞の心をくすぐるのだ。表面的な矛盾が、深いところではなんとなく理解できそうなところに、恋をしてしまうのだろうか。

僕も、清水さんにぼんやりと思いを寄せていた。